南インド、チェンナイの小さな出版社「Tara Books」の手づくり絵本『夜の木』(原書『The Night Life of Trees』)。2008年のボローニャ・ブックフェアで、優れたデザインの本に贈られるラガッツィ賞に輝いた、世界中の本好きを魅了する美しい絵本です。
版を重ねるごとに表紙の絵が変わる『夜の木』。今回、ヒシガタ文庫でご紹介するのは第11版、表紙は人類誕生の一場面を描いた「木の創造」です。
『夜の木』に描かれるのは、木にまつわるインドの神話的な世界。中央インドに暮らす少数民族・ゴンド族出身の3人のアーティストが、一族に伝わる物語を、伝統的なアート手法を用いて描き出しています。
闇夜に光り、迷子になった人々を導いてくれる、精霊の宿る木。
植物として生まれ変わり、愛しあう木々。
創造主のすみかとされる真理の木、菩提樹。
鮮やかな発色の印刷、心地よい文章のリズム、ざっくりとした紙の手ざわりとインクの匂い。繊細で力強く美しい原初の世界を、五感のすべてを通じて感じ取る、そんな”宝物”のような一冊です。
『夜の木』の制作は、紙漉きから印刷、製本まですべての工程が手作業。この本のためだけに作られた漆黒の紙は、原料に黒い古布を使い、職人が手で漉いて、自然の風で乾燥させた、独特の風合いをもつ手漉き紙です。
その紙の上に、シルクスクリーンで一枚ずつ、1ページにつき82回もの印刷を重ねて刷り上げられた絵と文章。麻紐でかがり、職人の手で一冊一冊、丁寧に綴じられた製本。
裏面にはすべて手書きのシリアルナンバー入りで、まさに工芸品とも言うべき世界にひとつだけの特別な一冊です。
闇夜に光る木々たちを描いた絵本『夜の木』。ページをめくる度に、美しい木々が現れ、その美しさに息を飲み、力強い世界観に引き込まれていきます。