2013年に開催された名古屋市文化基金事業 ファン・デ・ナゴヤ美術展2013「のこりもの‐世界の性質:残るということについての研究‐」の記録集として作られた一冊。
本展は、「ホモ・サピエンスの道具研究会」という人類学者によるリサーチ・グループが企画し、人類学者の他、ガラス作家や料理専門家などを様々な表現者がテーマを掘り下げ、展開した興味深い展覧会です。
展覧会の記録に、新たな要素を加え、新装版として届けられた一冊。呼吸をする、ペンで何かを書く、頬にあたる風を感じるなど、日々の暮らしの中であたりまえなことに目を向け、考察する。
「世界はあたりまえのようにあって、すでに誰もがあじわっているけれど、それをきちんとあじわおうとすれば、いつもと違った「何か」が必要です。本というものは、そうしたきっかけをあたえてくれるもの。この本は、どのページを開いても、特別なものは何もなく、呼吸や靴や掃除といった、ありふれた日常の話があるだけですが、世界とはそのようなものです。でも、そこには展覧会の企画へと至った観察と発見が詰まってもいます。この世界には、どんな味かは別として、たしかなあじわいがあります。この本をきっかけに、気づく、探る、指し示すの単純な流れに沿って、みなさんも、毎日の営みのうちにある、それらのあじわいに出会ってもらえればと思います。」(本書「はじめにより」)
『世界をきちんとあじわうための本』。タイトルのとおり、日々の暮らしに新たな気付きを与えてくれ、読後感を味わえる一冊です。