札幌在住の作家、すずきまいこさんの初めての絵本。戦時中の動物園で行われた猛獣処分について、その事実を調査している三上右近さんが、すずきさんがボールペンで描くクマの作品を知り、共に制作した絵本です。
ある日、戦時中に飼育員の仕事をしていたおじいちゃんは、孫のけんじに、世話をしていたクマの親子のニコーとリコーのついて、語り始めました。
戦時中は、空襲で猛獣たちが逃げ出す危険を回避するため、あちこちの動物園で、ライオンやクマ、ゾウなど多くの動物たちが次々に殺されていきました。
わが子のように大切にしていたクマの親子を、その手で殺さなければならなかった飼育員さんの苦しみ。その辛い記憶を、大切な孫に聞かせるおじいちゃん。
人間たちが起こした戦争に巻き込まれ、罪のない動物が殺されなければならなかった悲しい事実。後書きには、その事実が年表にまとめられ、掲載されています。
この本の元になった資料を提供した三上右近さんは、こう言います。「動物園は平和そのものである」。戦争を知らない子どもたちに、戦争の悲惨さと平和の尊さを伝える貴重な絵本です。