2025年に出版80周年を迎えるムーミンシリーズの第9巻『小さなトロールと大きな洪水』。
シリーズ最終巻にして、トーベ・ヤンソンが生み出した、記念すべき第1作目のムーミン一家の物語です。

ムーミンパパはいないけど、もう待っていられない！

ニョロニョロと一緒にいなくなってしまったパパを探しに、ムーミンママはムーミントロールを連れて旅に出ます。おそろしい森や沼をぬけ、荒れ狂う海をわたり、お日さまの光あふれるあたたかい場所をめざして、たどり着いた一軒の家。中から出てきた赤い髪の少年はパパに会ったことがあるようでーーー。

本作は、第二次世界大戦直後の1945年に小冊子として発表された後、長らく絶版となっていたもの。ムーミンシリーズが完結した1991年に、ようやく本として出版されました。

冬戦争の最中に執筆された本作は、登場人物の描写や語り口、トーベ・ヤンソン自身の手による挿し絵もどこか、他のムーミンシリーズとは趣を異にしています。

ですが、冒険の中で様々な生きものに出会って助けられたり、あるいは助けたり、時には家族になったり。短い物語の中で描かれる、生き生きとしたキャラクターたちの姿には、後に続くムーミンの世界観がしっかり構築されていることを感じられます。

ムーミン一家はどのようにしてムーミン谷に辿り着いたのか、ムーミンママのハンドバッグは物語の中でどんな重要な役割を果たすのか。ムーミンシリーズの礎となる大切な一冊。この機会にぜひ、お手に取ってみてはいかがでしょうか。