2015年に多くの人に惜しまれつつ閉店した札幌の街の本屋さん「くすみ書房」の店主、久住邦晴さんの未完の遺稿を基に生まれた一冊「奇跡の本屋をつくりたい‐くすみ書房のオヤジが残したもの」。
くすみ書房では、他店にはない視点で様々な取り組みが実施されていました。第一弾の企画が「なぜだ!?売れない文庫フェア」。売上のランク外にある本に目を向け、店舗にはほとんど置かれず絶版となり、良書が消えていくことに危機感を持たれました。その埋もれた良書を一人でも多くの人に知ってもらいたいという想いから、生まれた企画です。
ある時は、店頭に立ちながら、学生がいない店内を見まわし、中学生向けの本がほとんどないのではないかと気付きます。その気づきから生まれた企画が「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」。多くのメディアでも取り上げられ、大きな反響を呼びました。
2015年の閉店後も「奇跡の本屋をつくりたい」と構想を練られ、闘病中も本書となった原稿の執筆を続けられました。本書に収められた穏やかな笑顔の久住さんは、写真家でもある長女のクスミエリカさんが撮影された写真です。
本書は、久住さんと交流の深かった中島岳志さんのご協力により、久住さんが大好きだったミシマ社より出版されています。装画はミロコマチコさん、装丁は矢萩多聞さん。多くの方の力が結実し、生まれた一冊。
みんなの街の本屋さんを存続させるために、こどもたちに本から得られる感動を伝えるために、全身全霊で駆け抜けた書店人の人生。くすみ書房を知る方はもちろん、多くの方々に手に取っていただきたい一冊です。